マッチレビュー

<特別企画>粉河高校マッチレビュー第1弾~VS海南高校~

投稿日:2020-10-01 更新日:

はじめに

皆さんは、和歌山県のとある高校のサッカー部でプレー経験が無いまま監督を務めている人物がいることを知っているだろうか?

その人物はTwitterで「わっきー」と名乗り、可愛らしいアイコンで主にゆる~い呟きを投稿しているのだが、実はかなりの凄腕監督なのだ。

Twitterで自チームの模型のようなゲームモデルなるものを共有し、オープンかつ精力的に活動を続けた結果、遂には「プレー経験ゼロでもできる実践的ゲームモデルの作り方」という書籍を執筆するまでに至ったのだ。

幸運にも、この本が発売される1年ほど前に筆者はわっきーさんの指揮する和歌山県立粉河高校サッカー部にて分析官のようなことをさせていただいていた(現在は所属しているか不透明)。

そして今月わっきーさんから連絡があり、粉河高校のマッチレビューを書いてゲームモデルの積み重ねを可視化していこうぜ!的なノリで始まったのがこの特別企画である。

記念すべき第1弾は和歌山県立海南高校とのリーグ戦。


VS海南高校レビュー

フォーメーション図


粉河高校は4-3-3、海南高校は4-1-4-1のフォーメーション。

試合がキックオフして間もなく、粉河高校のゴールキックになる。

近年ゴールキックの重要性はかなり高くなっており、それを見たらチームがどのようなプレーを目指しているのかが分かることも少なくない。そんな中、粉河高校のゴールキックはCBの2人がペナルティエリア角付近に立ち、アンカーが敵CFの後ろに位置して菱形を形成。基本的にCBへのパスでスタートし、後方からつないでいく狙いがあると言っていいだろう。

粉河高校ゴールキック



キーになる縦パス



GK→CB→アンカーの順にパスをつないで相手1列目を突破することが多く、「優位を前線に届ける」という前進時の原則通りの攻撃をしているのだが、問題はその先にある。アンカーが持った時には相手のMFに寄せられており、前進できずにCBにバックパスを選択する場面や、強引にCFに縦パスを送って横圧縮した守備網にインターセプトされる場面が頻繁に見受けられた。時々攻め急いでしまい、安易なパスミスでカウンターを食らうシーンも見られた。




強引、いや積極的とも言うべき縦パスはいわば諸刃の剣だ。通ればチャンスに繋がるが、通らなければ大きなピンチを迎えやすい。

実際、この試合では被インターセプトからのネガティブトランジション(守備→攻撃)の局面で失点している。

逆に攻撃時に縦パスが通った時には、レイオフ(落とし)などのコンビネーションからスピードアップして一気に敵ゴールに向かう。

海南戦で見られた、GKからショートパスで丁寧につないで縦パスとレイオフとスペースの活用を駆使してゴールを決めたシーンが象徴的だ。相手の矢印を見て先手を取り続けたチームのコンセプト通りのプレーと言える。

そして、粉河高校の積極的な縦パスが1番活きるのはポジティブトランジションの局面だろう。相手の陣形が崩れている瞬間を狙って前線にボールを送り、速攻で相手ゴールに迫った場面を筆者は過去にも何度か見てきた。

この試合も例外でなく、ゾーン2で奪ってからカウンターでゴールに沈めている。






また、粉河は後方から最前線まで毎回ショートパスでつないでいくという感じではない。相手最終ラインの裏に広大なスペースがあればそこにロングパスを蹴るし、最前線の選手がマークしている相手DFと縦軸がズレていればそこにボールを送るようにチャレンジする。

この試合では右CBの19番から左WGの14番への対角ロングパスは何度か成功しており、一気に盤面をひっくり返す強力な武器となっている。




苦手なボール非保持の局面、試合終盤の殴り合い

この試合でも脆さが見られ、粉河高校が苦手としているのが守備の局面。

2年前から粉河は枝Dをベースとした守備を導入し、「高さ」と「時系列」の中で可能性を支配するようなプレッシングを志向している(ゾーン2と3限定)。

だが、今回はこれが上手くハマらずにピッチを大きく使われ、相手がボールをゆったり持った時にはゾーン1まで頻繁に攻められていた。

わっきーさんも試合中に「ボールの高さ揃わんのやったら奪いに行ったらあかんで」とコーチングしており、「まだまだ浸透していない」と語っている。

守備とネガティブトランジション(とその準備)がうまくいっておらずこの試合では3失点してしまったのだが、ここがさらに磨かれてCLで流行りの全方位型チームみたいになってほしいな、と切実に願っている。

また、後半の終盤にはオープンな展開になり互いのゴールを行き来するかに思われたが、徐々に押し込まれて自陣でサッカーをすることが多くなってしまった。粉河のポゼッションは、回数自体は相手より多いのだが、すぐに縦に攻めるためにボール保持の時間が短くなり、トランジション(攻守の切り替え)も増えて心身ともに疲労しやすいのかもしれない。

結果として、海南高校戦は2-3でのスコアで試合終了。次回は和歌山県立桐蔭高校戦を書こうかな、と企てております。




参考資料

ゲームモデルとは何なのか?

https://www.footballista.jp/feature/80774

プレー経験ゼロでもできる 実践的ゲームモデルの作り方


https://www.footballista.jp/book/79346

枝D ボールも自由も奪い取る術~守備からみるフットボールの新しい景色

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